離任式・着任式と1学期始業式
2023年4月10日、3年ぶりに中学と高校の全校生が講堂に集まり、離任式・着任式と1学期の始業式をおこないました。
学校長 講話
1学期の始業式にあたって、3人の天才の話から始めます。
ブッダ・孔子・ソクラテスの3人です。聞いたことがあるでしょう。
3人は2600年ほど前(紀元前500年から600年)にインド・中国・ギリシャに生きました。この時代を「知の枢軸時代」とドイツのカール・ヤスパースが指摘しています。
ちょうどこの時期には地球が少し暖かくなり、鉄器の波及とともに農業の生産力が飛躍的に伸びました。そこで人間が勉強するゆとり持てたのも影響があるかもしれません。皆さんもよく知っているように、ブッダは「慈悲」、孔子は「天」を中心に自分の考えを説明しています。ソクラテスは、「自分で考える」ことを中心に据えて主張しています。今もヨーロッパでは個人の尊厳や自由を重んじるギリシャ哲学が生きています。フランスはあの有名なフランス革命を起こした国ですから、人間の権利・人権という考え方の本家本元です。そこでは一人一人が考えて行動することを大切にすることを基本としています。
フランスの思想家ジャン・ジャック・ルソーは「人間が幸福になるには物事を自分で決めることが大切だ」と言っています。私は昨日の入学式で、新入生に「自分で考えて行動しましょう」「自分の可能性を信じ、最後まであきらめないで生きよう」と話しました。今日講堂に集まってもらった皆さんにも、ぜひ今年度は物事を自分で考えて決めることをやってもらいたいと思っています。他の人に決めてもらうのではなく、自分でやれば、「精一杯やった。これ以上はできない」と納得がいきます。ほかの人にやってもらうと「もっといいやり方があった」と文句ばかりが出てきそうです。
自分で考えて実行することが多くなれば、自然に他人を意識できるようになります。自分の思い通りばかりにはいかないからです。社会はそんな甘くはないからです。それは、「自己の社会化」と言われるものです。自分をしっかり持った一人ひとりが相互に生かしあう社会をいま私たちは求めています。
人の言いなりになるのではなく、人に合わせるばかりでなく、自分を社会の中で役立てる、自分を社会で役立つ人に成長させるそういう人が集う神戸龍谷中・高等学校になればよいと思います。
今日も皆さんはマスクをしている人が多いですね。コロナの拡大の中では様々な制約がありました。集まって遊びたくても遊べませんでしたね。やりたいと自分では思ってもやはり社会には制約は必要です。私たちは、自分で考える中でも社会と折り合いをつけて生きています。他人に合わせながらも、しっかりと自分を持っているということを意識してほしいということです。
入学式で本校の理事長である小澤先生は「本当の友達を作りなさい」と言っておられました。友達とつきあっているということは自然に「自分の社会化」ができます。今日は「自分で考えて行動する」「自分を社会で役立つ人に育てる」「決してあきらめない」という話をしました。
最後に、もし校長と話をしてみようと思ったら、いつでも校長室を訪ねてきてください。生徒の皆さんと話をする時間をできるだけ優先させたいと思っています。いろいろな集会にも参加させてもらいますが、皆さん一人一人とも話をしたいと思っています。勇気を出して、自分を語りに校長室に来てください。以上です。
参考:
日経ビジネス電子版 (nikkei.com) ,
「知の大爆発、哲学もキリスト教も仏教もここで生まれた」,立命館アジア太平洋大学の学長 出口治明 ,
URL:https://business.nikkei.com/atcl/seminar/20/00002/012200002/ , (参照 2023年4月10日)。